いわもと皮フ科クリニック

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神奈川県藤沢市辻堂2丁目4−30
田代ビル 2階

酒さ・赤ら顔

酒さ・赤ら顔

酒さ・赤ら顔とは

酒さは「赤ら顔」とも呼ばれる慢性の炎症性皮膚疾患です。
顔面、特に鼻や頬、額などに赤みやニキビのような症状が現れるのが特徴です。

この疾患は30代以降に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。
接客業など人前に出ること、話すことが多い仕事に就いてる方にとっては日常生活に支障をきたすこともあり、患者さまには精神的な負担も大きい病気です。

一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)とは異なり、毛穴の入り口の角化や毛穴の詰まりを伴わないことが特徴です。
皮膚の症状だけでなく、ほてりやヒリヒリ感といった不快な感覚を伴うことも特徴的です。酒さは治療で症状を改善できますが、根気強く取り組むことが大切です。

酒さ・赤ら顔の画像

酒さのタイプ

酒さは症状によって主に4つのタイプに分類されます。

①紅斑毛細血管拡張型
②丘疹膿疱型
③鼻瘤型
④眼型

これらのタイプは単独で現れることもあれば、複数のタイプが同時に現れることもあります。

紅斑毛細血管拡張型

顔面に持続的な赤みが生じ、毛細血管の拡張が特徴的です。鼻や両頬・あご・眉間・額など、顔の中心部分から赤み(紅斑)が広がります。 温度変化や飲酒、運動などの刺激で赤みが増悪しやすく、熱感やヒリヒリ感が伴うことがあります。

この型は女性に多く見られ、見た目も目立つので患者さまにとって精神的な負担が大きい症状です。

丘疹膿疱型

毛穴がある部分に赤い盛り上がり(丘疹)や膿のたまったぶつぶつ(膿疱)が見られます。 見た目はニキビに似ていますが、ニキビと違って毛穴でないところにぶつぶつがみられ、毛穴の詰まりは見られません。

紅斑毛細血管拡張型と併存していることが多く、炎症が強いのが特徴です。

鼻瘤(びりゅう)型

鼻の皮膚が厚くなり、こぶのようなもの(瘤腫)ができます。
毛穴が広がり、皮脂分泌が活発になります。 進行すると、皮膚がデコボコとして形が変わる場合もあります。

このタイプは男性に多く見られ、重症になると鼻の形状が大きく変化してしまうこともあります。

眼型

眼の周囲に症状が現れるタイプで、眼の充血、乾燥、異物感、かゆみなどの症状が生じます。 まぶたの縁が赤くなったり、角膜炎や結膜炎を併発したりすることもあります。他のタイプと併存していることが多く、見落とされがちですが、適切な治療が必要です。

当院における酒さの治療法

当院では酒さの治療は症状や重症度に応じて以下の治療薬を使用しています。

また、治療と並行して、日焼け止めや日傘などを使って紫外線を避け、乾燥を防ぐために保湿剤を塗り、刺激性の低い洗顔料を使用するなどのスキンケア指導も行っています。酒さは悪化と改善を繰り返すことがありますが、根気強く治療を続けることで症状をコントロールできます。

診断を行っている画像

ロゼックスゲル(保険適応)

ロゼックスゲルは、メトロニダゾールを有効成分とする酒さの治療薬です。
2022年5月26日に日本でも酒さ治療薬として保険適用となりました。欧米では標準治療薬として位置づけられており、高い効果が認められています。

この薬は酒さ病変部に増加している活性酸素種の生成を抑えることで抗炎症作用を示します。また、免疫細胞によるTNF-αの産生や貪食細胞の免疫能等を抑えることで免疫抑制作用を示し、慢性の皮膚の炎症を抑えます。

使用方法は1日2回、患部を洗浄後(朝・夕の洗顔後または入浴後)に症状の出ている部位にのばして塗ることです。効果は徐々に現れ、赤みはゆるやかに改善し、赤い盛り上がりや膿をもったぶつぶつは比較的早く改善が認められ、一般的には数か月で効果が見られます。

アゼライン酸

アゼライン酸は酒さ治療に効果的な外用薬のひとつです。
当院では酒さを患った方に対してベーシックなスキンケアとしてアゼライン酸入りの化粧水乳液を処方しております。

この薬剤はケラチノサイトの増殖を阻害し、弱い抗炎症作用を有します。また、酒さの患者さまは高いレベルのセリンプロテアーゼKLK5(酒さの原因の一因)を持っており、これを抑制することで酒さの治療に役立ちます。

使用方法は1日に1回、患部に塗布します。
効果が出るまでの目安となる期間は2週間程度ですが、使い始めに軽度の刺激感を感じる人もいます。刺激感が気になるときには、症状にあわせて1日1回や1日おきなど使用する頻度を減らしてください。

アゼライン酸の副作用としては乾燥、かゆみなどの副作用の発症が稀に起こり得ます。

イソトレチノイン

イソトレチノインはビタミンA誘導体の一種で、毛穴の詰まりを抑制する作用、皮脂の分泌を抑える作用、抗炎症作用などがあり、難治性の酒さに対して効果が期待できる内服薬です。海外では「ロアキュタン」「アキュテイン」「イソトロイン」「アクネトレント」などの商品名で知られています。

この薬は酒さによる赤ら顔にも効果が期待できるとされており、当院では重度に丘疹が多発しているケースやロゼックスゲル、アゼライン酸で効果が乏しいケースにはイソトレチノインをおすすめしています。

使用期間はほとんどの患者さまはイソトレチノイン内服から6ヵ月で効果が期待できますが、治療期間には個人差があり、延長することもあります。

ただし副作用も多く、口唇炎や唇の乾燥は特に起きやすく、約90%の方にみられます。また、妊娠している方、妊娠予定のある方、服用期間中に妊娠する可能性のある方には禁忌とされています。

使用にあたっては必ず医師の指導のもとで服用し、副作用を防ぐため、イソトレチノインの服用開始時と、治療から1ヵ月後に血液検査を行うなど、定期的な検査と管理が必要です。

以上が当院で提供している酒さ・赤ら顔の治療についての説明です。
症状や体質に合わせて最適な治療法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。