
陥入爪・巻き爪
陥入爪とは
陥入爪(かんにゅうそう)は、爪の端が周囲の皮膚に食い込んでしまう状態を指します。
主に足の親指に発生することが多く、爪の側面が皮膚に刺さることで、痛み、腫れ、赤みなどの炎症症状を引き起こします。
症状が進行すると、爪の周りに膿がたまったり、肉芽(にくげ)と呼ばれる赤い柔らかい組織が盛り上がることもあります。肉芽が形成されると、痛みが強くなり、歩行困難になることもあります。
初期段階では軽い痛みを感じる程度ですが、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。陥入爪は若い方から高齢の方まで幅広い年齢層で見られる一般的な爪のトラブルです。

陥入爪になる原因
陥入爪になる原因として真っ先に挙げられるのが、爪の切り方です。
爪を深く丸く切りすぎると、爪の両端が皮膚に食い込みやすくなります。正しい爪の切り方は、まっすぐに切り、角を残すことです。
また、きつい靴や先の細い靴を履くことも、爪に圧力がかかり陥入爪の原因となります。特にハイヒールなどは前方に足が滑り、爪に負担がかかりやすいので注意が必要です。
その他にも下記などが原因になるケースがあります。
- 外傷で爪が損傷する
- 汗をかきやすい体質で皮膚が柔らかくなる
- 遺伝的に爪の形が湾曲している
また日常的にスポーツをする方、特に長時間歩いたり走ったりする競技を行う方は、摩擦や圧力が増すため陥入爪になりやすい傾向があります。
陥入爪のリスク・副作用
陥入爪を放置すると、様々なリスクや合併症が生じる可能性があります。
最も一般的なのは、爪周囲の皮膚に細菌感染が起こることです。
これにより、膿が溜まり、痛みや腫れが悪化します。重症化すると、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の深部感染症に発展することもあります。
また、慢性的な陥入爪では、肉芽組織が形成され、出血しやすくなったり、常に痛みを感じたりする状態が続きます。特に糖尿病患者や末梢血管疾患を持つ方は、治癒が遅れたり、重篤な感染症に発展するリスクが高まります。
また、適切な治療を受けないまま自己処置を続けると、症状が悪化し、最終的により侵襲的な治療が必要になることもあります。痛みによる歩行障害が生じると、日常生活の質が著しく低下することも重要な問題です。
陥入爪の予防と対策
陥入爪を予防するには、正しい爪の切り方を心がけることが最も重要です。
爪は深く切り込まず、まっすぐに切り、角を残すようにしましょう。爪切りは鋭利なものを使用し、爪が柔らかいお風呂上りに切るとよいでしょう。
また、足に合った靴を選ぶことも大切です。つま先に十分な空間があり、足を圧迫しない靴を選びましょう。特にスポーツをする方は、活動に適した靴と、クッション性のある靴下を使用することをお勧めします。足の清潔を保つことも予防につながります。
足の汗量が多い方は、吸湿性の良い靴下を使用し、こまめに履き替えることが効果的です。
巻き爪とは
巻き爪は、爪が横方向に湾曲して、端が皮膚に食い込むことなく、爪自体が筒状に丸まってしまう状態です。
陥入爪とよく混同されますが、巻き爪は爪自体の形状変化であり、必ずしも皮膚への食い込みを伴うわけではありません。巻き爪は長期間にわたる圧力や、遺伝的要因、加齢、靴による圧迫などが原因で発生します。初期段階では痛みがないことも多いですが、進行すると歩行時の痛みや爪の変形が目立つようになります。
巻き爪は特に高齢者に多く見られ、足のケアが難しくなる方は注意が必要です。
巻き爪と陥入爪は併発することもあり、その場合は症状がより複雑になることがあります。
当院では巻き爪の治療は基本行っておらず、他院さんに紹介しております。

当院の治療方法
当院では初期段階や軽度の陥入爪ではテーピング法や冷凍凝固術(液体窒素)による施術を行います。
感染がある場合は、抗生物質の内服や外用薬での治療も行います。
症状が重度の場合や、保存的治療で改善が見られない場合は手術を受けることができる総合病院を紹介しております。

テーピング法
テーピング法は、陥入爪の保存的治療として広く用いられている効果的な方法です。
この治療法は、特殊なテープを使って爪が皮膚に食い込むのを防ぎ、正しい方向に爪が成長するよう誘導します。
具体的には、爪の側面に沿ってテープを貼り、爪を持ち上げるように引っ張り、爪と皮膚の間にわずかな隙間を作ります。これにより、爪が皮膚を圧迫する力が軽減され、痛みが和らぎます。
テーピング法の利点は、痛みが少なく、自宅でも継続しやすい点です。また、外科的処置とは異なり、爪を切除せずに済むため、見た目も保たれます。
当院では、患者さまの状態に合わせたテーピングの方法をご指導し、必要に応じて定期的に調整しています。継続することで、爪が正常に伸びてくるため、根本的な改善が期待できます。
冷凍凝固術(液体窒素)
冷凍凝固術は、主に陥入爪によって形成された肉芽組織(過剰な肉の盛り上がり)の治療に効果的な方法です。この治療では、マイナス196度の液体窒素を使用して肉芽組織を凍結させます。凍結された組織は数日後に壊死し、自然に脱落します。
液体窒素の塗布は数秒から数十秒程度で、施術中に軽度の痛みや灼熱感を感じることがありますが、短時間で終わるため比較的耐えやすいのが特徴です。
この治療の利点は、出血がほとんどなく、手術のような切開を必要としないため、傷跡が最小限に抑えられることです。一度の治療で効果が出ることもありますが、肉芽の状態によっては数回の治療が必要になることもあります。
液体窒素療法は、陥入爪の根本的な治療ではなく、合併症として生じた肉芽を取り除く治療法ですので、同時に陥入爪自体の治療も行うことが重要です。