いわもと皮フ科クリニック

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帯状疱疹

帯状疱疹

帯状疱疹とは

帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じウイルスである水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる皮膚疾患です。このウイルスは子どもの頃に水ぼうそうにかかったときに体内に潜伏し、その後、免疫力が低下したときに再活性化して帯状疱疹として発症します。

子どもの頃に水ぼうそうにかかると、水痘・帯状疱疹ウイルスが体の中で長期間潜伏感染し、加齢や疲労によって免疫が低下した際などに「帯状疱疹」として発症します。

帯状疱疹の発症率は年齢とともに高くなり、50歳代から増え始め、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。また、加齢だけでなく、ストレスや疲労なども発症の引き金となることがあります。

帯状疱疹のイメージ画像

帯状疱疹の原因

帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされるウイルス感染症で、潜伏感染しているVZVの再活性化によって発症します。VZVが気道粘膜または眼粘膜を介して感染すると、感染から約2週間後に水痘病変が発現します。

通常、水ぼうそう自体は数週間で自然治癒しますが、ウイルスは脊髄後根神経節に潜伏感染します。その後、ストレスや加齢などによって免疫力が低下するとVZVが再活性化し、皮膚症状や疼痛を主な症状とする帯状疱疹が現れます。

帯状疱疹の治療方法

当院における帯状疱疹の治療には主に「抗ヘルペスウイルス薬」と呼ばれる薬剤が使用されます。これらは帯状疱疹の原因となるヘルペスウイルスの増殖を抑える効果があります。早期に治療を開始することが重要で、可能な限り早い段階で抗ウイルス薬を服用して休養することが肝心です。

抗ヘルペスウイルス薬にはアメナリーフ、バルトレックス、ファムビルなどがあります。
効果が出始めるのは個人差はありますが服用してから2〜3日後で、一般的には7日間服用します。

薬を飲まなければ自然に治るまで約3週間かかりますが、抗ウイルス薬を服用すると1週間〜10日程度で治まることがほとんどです。早めに服用するほど発疹が水ぶくれになってただれたり、潰瘍になったりして跡が残るのを防げます。重症化の防止にも有効で、治療後に痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」の予防にもつながります。

アメナリーフ

アメナリーフは、従来の抗ヘルペスウイルス薬とは異なる新しい作用機序の薬です。

水痘・帯状疱疹ウイルス複製の初期段階である二本鎖DNAの開裂及びRNAプライマーの合成に必要なヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を直接阻害することで、ヘルペスウイルスの増殖を初期段階で抑制します。

アメナリーフの特徴として、1日1回内服ですむため、簡便でコンプライアンスに優れることが挙げられます。また、75%が糞便中に排泄されるため、腎機能低下の際のクレアチニンクリアランスに基づく用量調節が不要であり、高齢者を始め腎機能低下した患者さんに用量調節することなく処方できるという利点があります。

アメナリーフは1日1回、2錠を食後(30分以内を目安)に7日間服用します。ウイルスの増殖を抑えるお薬のため、早期からの服用が有効です。帯状疱疹による皮疹出現後72時間以内の方を対象とした国内の臨床試験では、投与開始から4日目までに新たな皮疹形成の停止が認められた人の割合は約8割、治癒までの平均日数は11日であったと報告されています。

ファムビル

ファムビルは従来、口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの治療に用いられる薬剤です。。ファムビルの有効成分であるファムシクロビルは、体内に吸収されたあと肝臓で抗ウイルス活性を示すペンシクロビルに代謝されます。

ペンシクロビルは単純ヘルペスウイルス1型及び2型、水ぼうそう・帯状疱疹ウイルスに対して抗ウイルス作用(培養細胞におけるウイルス増殖抑制作用)を示します。ウイルスDNAポリメラーゼの基質の1つであるデオキシグアノシン三リン酸化体(dGTP)と競合的に拮抗することにより、ウイルスDNAポリメラーゼ阻害作用を示し、ウイルスの増殖を抑制します。

帯状疱疹の場合、ファムビル錠として1回500mgを1日3回、原則的に7日間服用します。投与は発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始することが重要です(目安として皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい)。

バルトレックス

バルトレックスはバラシクロビル塩酸塩を主成分とする抗ウイルス薬です。
帯状疱疹の治療には、成人・体重40kg以上の小児に対して1回1000mg、1日3回の経口投与が推奨されています。治療期間は原則として7日間で、皮疹出現後72時間以内の早期投与が効果的です。改善の兆しが見られない場合や悪化する場合には、他の治療に切り替える必要があります。

バルトレックスの臨床効果として、ウイルス排出期間の短縮、新規皮膚病変の出現抑制、皮膚病変の治癒促進が期待できます。また、急性期疼痛の緩和や帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症リスク低減にも効果があり、生活の質(QOL)の向上に寄与します。腎機能低下のある患者や高齢者では用量調節が必要です。

点滴療法

高齢者の方、糖尿病患者、顔面に発症してしまった方などは帯状疱疹が重症化しやすい傾向にあります。
その場合は抗ウイルス薬を点滴で投与する方が上記で挙げた内服薬より望ましいので、総合病院への紹介を行っております。点滴療法を受けることになった場合、おおよそ1週間ほどの入院が必要になります。

帯状疱疹の予防接種について

帯状疱疹ワクチンには、2016年に認可された「弱毒生水痘ワクチン」と2020年に認可された「シングリックス」の2種類があります。これらのワクチンによって、帯状疱疹やその合併症を予防することができます。

帯状疱疹ワクチンの定期接種は2025年度から始まり、65歳の方と、60〜64歳で特定の免疫機能障害がある方が対象となります。また、2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳となる方も対象となります。

注射の画像

シングリックス

当院では帯状疱疹ワクチンはシングリックスを取り扱っております。

シングリックスは、ウイルスそのものを弱毒化した生ワクチンではなく、帯状疱疹ウイルスの表面に存在する糖タンパク質E(gE)を抗原とした世界初の組換えサブユニットワクチンです。すでにウイルスに対する免疫を有する人に対してgE抗原をアジュバント(ワクチンの効果を高める物質)とともに接種すると、gE抗原に特異的なCD4陽性T細胞と抗体が誘導され、帯状疱疹に対する予防効果を発揮します。

シングリックスの帯状疱疹発症予防効果は、50歳以上を対象とした試験で97.2%、70歳以上を対象とした試験で89.8%とされています。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症予防についても、50歳以上で100%、70歳以上で85.5%の減少率を認めており、少なくとも10年間は予防効果が持続することが確認されています。

シングリックスは、50歳以上の成人に1回0.5mLを2か月間隔で2回、筋肉内に接種します。1回目の接種から2か月を超えた場合でも、6か月後までに2回目の接種をすれば効果が期待できます。費用は1回22,000円です。2回接種で合計約44,000円です。

効果の高さと持続期間の長さから多くの医療機関で推奨されています。