医療コラム
イソトレチノインの副作用とは?安全な服用のポイントを皮膚科医が解説
2025/10/30

「イソトレチノインの副作用が怖い」「乾燥や体調変化が出るって本当?」
そんな不安を感じて検索された方も多いのではないでしょうか。
イソトレチノイン(ロアキュタン・アクネトレント)は、重度のニキビ治療に高い効果を発揮する内服薬です。
皮脂の分泌を抑え、繰り返すニキビを根本から改善へ導く一方で、乾燥や肝機能の変化などの副作用が現れる可能性もあります。
本記事では、医師監修のもとで「どんな副作用があるのか」「どの程度注意が必要か」をわかりやすく解説します。
「治療を始めたいけど不安がある」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
イソトレチノインとは?

ニキビ治療の中でも「最後の切り札」と呼ばれることがあるイソトレチノイン。
それほどまでに高い治療効果を持つ一方で、副作用や服用管理が求められるため、医師のもとで慎重に扱われる薬です。
ここでは、イソトレチノインの成分的な特徴、治療メカニズム、そしてなぜ重度ニキビに対して効果的なのかを解説します。
どんな薬?(ビタミンA誘導体としての作用)

イソトレチノインは、ビタミンA(レチノール)から派生した「レチノイド」と呼ばれる成分群の一つです。
主な作用は、皮脂腺の働きを抑制し、過剰な皮脂分泌を減らすこと。これにより、毛穴が詰まりにくくなり、ニキビの原因となるアクネ菌の増殖や炎症を抑えます。
さらに、皮膚の角化(ターンオーバー)を正常化することで、毛穴内部の老廃物をスムーズに排出しやすくし、「できてしまったニキビ」と「これからできるニキビ」の両方にアプローチします。
このように、イソトレチノインは単に炎症を抑えるだけでなく、ニキビの発生源そのものを抑制できる“根本治療型”の内服薬といえます。
なお、ビタミンA誘導体は本来、肌の新陳代謝を高める美容成分として知られていますが、イソトレチノインはその中でも医療用に強く設計された成分です。その分、効果が高く、医師による適切な管理が欠かせません。
なぜ重度ニキビに使われるのか

イソトレチノインが重度ニキビに使用される最大の理由は、従来の治療では届かない「皮脂腺レベル」に直接作用する点にあります。
一般的なニキビ治療では、外用薬(ディフェリンゲルなど)で角質の詰まりを改善したり、抗菌薬で炎症を抑えたりします。しかし、皮脂の分泌量そのものを減らすことはできません。
一方で、イソトレチノインは皮脂腺そのものの活動を抑える唯一の薬です。
皮脂が減ることで毛穴が清潔に保たれ、アクネ菌の繁殖環境も失われます。結果として、
- 炎症性ニキビの再発を防ぐ
- 皮膚の赤みやざらつきが改善する
- 治療後に「ニキビができにくい肌質」に変わる
といった長期的な改善が見込めます。
また、欧米ではニキビ治療の第一選択薬として広く使われており、再発率の低さや効果の持続性が多くの臨床研究で示されています。そのため、日本でも「他の治療で効果がなかった方」に対して、自費診療で導入されるケースが増えています。
保険治療では治らないニキビに有効な理由

日本の保険診療では、主に外用レチノイド(アダパレン)や抗菌薬(ミノマイシンなど)が中心です。これらは軽症〜中等症のニキビには有効ですが、皮脂分泌量が多く、炎症を繰り返す重症例には十分な効果が得られない場合があります。
また、長期間の抗菌薬使用は耐性菌のリスクがあり、治療効果が徐々に薄れてしまうことも。一方、イソトレチノインは皮脂腺そのものを縮小し、皮脂の分泌量を根本的に抑えるため、これらの問題を回避しながら持続的な改善を実現できます。
当院でも、保険治療で十分な改善が見られなかった方に対して、医師の判断のもと慎重にイソトレチノイン治療を提案しています。定期的な血液検査と経過観察を行いながら、副作用を最小限に抑えた安全な治療を心がけています。
イソトレチノインの副作用一覧

イソトレチノインは、重度ニキビに対して高い効果を発揮する一方で、服用中にいくつかの副作用が現れることがある薬です。
多くは一時的で軽度な症状ですが、体質や生活習慣によって現れ方には個人差があります。
ここでは、臨床的に確認されている代表的な副作用を「頻度別・重要度別」に整理して解説します。
※以下は一般的な情報であり、実際の症状や対応は医師の判断に基づきます。
一般的にみられる副作用

イソトレチノインで最も多く報告されるのが「乾燥」に関する症状です。
これは、皮脂分泌を抑える作用が原因で、唇・肌・粘膜などの水分保持力が一時的に低下するために起こります。
代表的な症状としては以下の通りです。
- 唇や皮膚の乾燥、つっぱり感
- ドライアイ(目の乾き)
- 鼻の粘膜の乾燥による鼻血
- 一時的なニキビの悪化(好転反応)
- かゆみ、発疹、赤み
- 筋肉痛、関節痛、背中の痛み
特に唇の乾燥(口唇炎)はほとんどの方にみられる副作用で、リップクリームやワセリンなどの保湿ケアを継続することで軽減できます。
ドライアイが気になる場合は人工涙液の使用が有効です。
また、服用開始後1〜2週間ほどの間に「ニキビが一時的に悪化したように見える」ことがあります。これは好転反応と呼ばれるもので、古い皮膚が排出される過程で一時的に炎症が強く見える現象です。多くの場合、2〜3週間で落ち着き、そこから徐々に改善が進みます。
筋肉痛や関節痛は、皮脂分泌抑制により筋肉や関節の潤滑が一時的に低下することが原因と考えられています。いずれも軽度であることが多く、医師の指導のもとで適切にケアすれば継続可能な範囲です。
このような一般的な副作用は、ほとんどが可逆的(服用をやめれば元に戻る)であり、深刻化するケースはまれです。ただし、乾燥や皮膚炎が強い場合は、早めに医師へご相談ください。
血液検査で確認される変化

イソトレチノイン服用中は、体内の代謝に影響が及ぶ可能性があるため、定期的な血液検査が必須です。
検査で特に確認するのは、以下の2つの項目です。
- 肝機能異常(AST・ALTの上昇)
- 中性脂肪・コレステロールの上昇
イソトレチノインは脂溶性の薬で、肝臓で代謝されます。そのため、まれに肝機能値が一時的に上昇することがあります。
通常は軽度で、服用を続けながら経過観察するケースがほとんどですが、数値が基準値を大きく超える場合には、一時的に休薬することもあります。
また、脂質代謝に関与する作用の影響で、中性脂肪やコレステロール値が一時的に上がることもあります。
このため、服用開始前と1ヶ月後に採血を行い、安全性を確認したうえで治療を継続します。その後も経過に応じて3ヶ月に1回程度の血液検査を行うことが一般的です。
検査の目的は、副作用の早期発見と重症化防止です。
当院でも、患者様一人ひとりの結果をもとに薬の用量を細かく調整し、安全に治療を続けられるようフォロー体制を整えています。
まれだが注意すべき副作用

頻度は低いものの、注意して観察すべき副作用も存在します。特に報告があるのは、精神症状・消化器症状・アレルギー反応です。
・精神症状
服用中に、まれに気分の落ち込みや不安感が強くなる方がいます。
因果関係ははっきりしていませんが、イソトレチノイン服用後にうつ症状が報告された事例もあるため、「気分が沈む」「やる気が出ない」と感じた際は、すぐに医師へ相談してください。
・炎症性腸疾患
下痢や腹痛など、消化器症状が続く場合も注意が必要です。
ごく稀に、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患と関連するケースがあるとされており、
そのような症状が長引く場合は速やかに検査を行います。
・重度のアレルギー反応
発疹やかゆみのほか、呼吸困難・喉の腫れなどのアナフィラキシー様症状が出た場合は、
すぐに服用を中止し、救急受診が必要です。
発症頻度は非常に低いですが、症状の初期段階で医師が対応できるよう、日常的に体調の変化を伝えていただくことが重要です。
これらの重篤な副作用は多くの方に起こるものではありませんが、「早期発見・早期対応」で十分に防ぐことが可能です。当院では、副作用の有無を丁寧にヒアリングしながら、安全に治療を継続できるようサポートしています。
副作用が出やすい人の特徴

イソトレチノインの副作用は、誰にでも起こり得ますが、体質や生活習慣によって出やすさに個人差があります。
特に以下のような方は、服用中に注意が必要です。
乾燥肌・敏感肌の方

皮脂分泌がもともと少ないため、乾燥や皮膚のつっぱり感が強く出やすい傾向があります。
保湿ケアを早めに始めることが大切です。
肝機能に不安がある方

イソトレチノインは肝臓で代謝されるため、肝機能が低下している場合は血中濃度が上がりやすく、副作用が強く出る可能性があります。
医師の判断のもとで検査を行いながら慎重に使用します。
このように、副作用の出方は人によって異なります。
「自分は大丈夫」と自己判断せず、医師と相談しながら治療を進めることが最も安全です。
服用中に避けた方がよいもの

イソトレチノイン服用中は、薬の作用が体内で強く働くため、併用や摂取を避けるべきものがいくつかあります。当院では、以下の3点を特に注意項目としてご案内しています。
ビタミンAを含むサプリメント
イソトレチノイン自体がビタミンA誘導体であるため、サプリなどでビタミンAを過剰摂取すると、頭痛・吐き気・めまいなどの“ビタミンA過剰症”を引き起こす恐れがあります。
抗生物質(テトラサイクリン系)との併用
併用により頭蓋内圧が上昇し、強い頭痛や視覚異常を起こす可能性があります。
他の薬を服用している場合は、必ず医師に申告してください。
妊娠・授乳中の服用、治療終了後6ヶ月以内の妊活
催奇形性のリスクがあるため、服用中および終了後6ヶ月は避妊が必要です。
これらを守ることで、安全に治療を継続し、副作用を最小限に抑えることが可能です。
イソトレチノインの副作用と対策

イソトレチノインの副作用の多くは、日常生活の中での工夫によって軽減・予防が可能です。
服用中は「保湿」「検査」「医師への相談」を意識することが、安心して治療を続けるための3つのポイントになります。
保湿ケアと日常生活での工夫

イソトレチノインの副作用で最も多いのが、唇や肌の乾燥です。
これは皮脂の分泌が抑えられることによって、水分を保持する力が弱まるために起こります。
乾燥を防ぐためには、ワセリンやリップクリームなどの保湿をこまめに行うことが基本です。
顔全体には刺激の少ない保湿剤(セラミド配合クリームなど)を使用し、入浴後や洗顔後すぐに塗ると効果的です。
また、乾燥が強い時期は加湿器を活用し、エアコンの風を直接顔に当てないように注意しましょう。
ドライアイが気になる場合は、人工涙液を使用することで症状を軽減できます。
一方で、アルコールや香料が含まれる化粧品・スクラブ洗顔などは刺激となるため、治療期間中は避けた方が安全です。
定期検査と医師フォローの重要性

イソトレチノインは、服用量と体の反応を見ながら慎重にコントロールする薬です。
そのため、当院では初回・1ヶ月後・その後の定期診察時に血液検査を受け、肝機能や脂質の変化を確認します。
検査結果に問題がなければ治療を継続し、数値に変化が見られる場合は用量を調整します。
このように、医師によるフォローアップは副作用の早期発見と重症化予防のための重要なステップです。
また、自己判断で検査や診察をスキップすると、症状の悪化に気づかないまま治療を続けてしまうリスクがあります。
不安な点がある場合は、小さなことでも医師へ相談するようにしましょう。
異変を感じたときの対処法
イソトレチノイン服用中に「頭痛が続く」「強い倦怠感がある」「腹痛や下痢が治まらない」など、
普段と違う体調の変化を感じた場合は、自己判断で服用を中止せず、すぐに医師へ相談してください。
症状の多くは一時的で、休薬や投与量の調整で改善するケースがほとんどです。
また、乾燥や赤みなどの軽い症状も、早めに相談することでスキンケアや薬の使い方を見直せる場合があります。
イソトレチノイン治療では、「気づいたら伝える」「早めに対応する」ことが安全継続のカギです。
当院での安全管理と治療の流れ

イソトレチノインは効果が高い分、服用管理を丁寧に行うことが大切です。
当院では、皮膚科専門医がすべての患者様に対して、診察・採血・処方・フォローを一貫して実施し、
安心して治療を続けられる環境を整えています。
ここでは、初回から再診までの流れと、副作用へのフォロー体制をご紹介します。
初回診察から処方までの流れ
初めてイソトレチノイン治療を受けられる方は、まず医師による診察とカウンセリングを行います。
肌の状態・ニキビの重症度・既往歴・服用中の薬などを確認したうえで、治療の適応を判断します。
当院では、初回時に血液検査を実施し、肝機能や脂質などの基礎数値を確認したうえで、
安全に治療を始められるかどうかを評価します。
- 初回:診察+採血+1ヶ月分の処方を実施
- 2回目:採血+処方(1ヶ月後)
- 3回目以降:必要に応じて採血を行いながら処方
治療期間はおおむね4〜6ヶ月が目安です。
効果が安定してきた段階で、徐々に内服量を減らすなど、症状と検査結果のバランスを見ながら調整していきます。
副作用フォロー体制

当院では、服用中の副作用を最小限に抑えるために、定期的な診察と血液検査を必須としています。
特に、治療開始後1ヶ月間は体が薬に慣れる時期のため、初回・1ヶ月後の2回の採血を必ず実施します。
検査結果に基づき、肝機能や脂質の数値に変化が見られた場合は、
一時的な休薬・減量・間隔調整など、柔軟に対応します。
また、乾燥や肌荒れなどの軽度な副作用についても、保湿剤の選び方やスキンケア方法を丁寧にご案内。
患者様の「不安」や「違和感」を見逃さず、医師とスタッフが継続的に伴走する体制を整えています。
治療経過はすべて電子カルテで管理しており、必要に応じて写真で経過比較を行うことで、
効果と安全性の両立を実現しています。
安心して治療を始めたい方へ
「何をしても治らなかった」「繰り返すニキビにもう疲れた」
そんな方こそ、イソトレチノイン治療を検討する価値があります。
当院では、保険診療で十分な改善が得られなかった方を対象に、医師が一人ひとりに合った治療プランを提案しています。
強い薬というイメージを持たれがちですが、正しく理解し、医師と二人三脚で進めることで、副作用を抑えながら大きな改善を実感される患者様も多くいらっしゃいます。
長年ニキビに悩んでいる方へ。まずはお気軽にご相談ください。
初めての方も、不安や疑問を解消してから安心してご来院いただけます。
診察では、無理な勧誘は一切行わず、現在の肌状態や治療歴をもとに、最適な治療方法をご案内します。
少しでも不安がある方は、まずはご相談だけでも大丈夫です。
当院が全力でサポートいたします
よくある質問

イソトレチノイン治療を検討する際、多くの方が「副作用」「乾燥」「再発」などに不安を感じられます。
ここでは、患者様から寄せられるご質問の中から、特に多いものをまとめてご紹介します。
副作用が出た場合、すぐに服用をやめたほうがいい?
症状の程度によって対応が異なります。
唇の乾燥や軽い肌荒れなどの軽度な副作用は、保湿ケアなどで対処可能なことが多く、
自己判断で中止する必要はありません。
一方で、強い頭痛・腹痛・倦怠感・気分の落ち込みなど、明らかに体調に変化を感じた場合は、すぐに服用を中止し、医師にご相談ください。
適切に対応すれば、多くの場合は一時的な症状で回復します。
乾燥が強いときのおすすめケアは?
乾燥はほとんどの方に現れる副作用です。
唇にはワセリンやリップバームを頻繁に使用し、肌には低刺激の保湿剤を朝晩しっかり塗布しましょう。
加湿器の利用や、水分補給も有効です。
スクラブやアルコール入り化粧品は避けるようにしてください。
治療をやめた後、再発することはある?
イソトレチノインは、皮脂腺の働きを抑えてニキビの根本原因にアプローチするため、
再発率が低い治療として知られています。
ただし、体質やホルモンバランスの変化によって再発することもあります。
当院では、治療終了後も一定期間フォローを行い、肌状態を確認しています。
生活習慣やスキンケアのアドバイスも含め、再発予防をサポートします。
服用期間はどのくらいが目安?
治療期間は平均で4〜6ヶ月程度です。
症状の重さや皮脂分泌量により個人差があり、改善が見られた段階で内服量を徐々に減らしていきます。
早く効果を出そうとして自己判断で増量するのは危険です。
必ず医師の指導に従って服用してください。
まとめ|副作用を正しく理解して、安全に治療を進めよう
イソトレチノインは、重度のニキビに対して高い効果を発揮する一方で、乾燥や体調の変化など副作用への注意が必要な薬です。
しかし、これらの多くは医師の管理下で正しく服用すれば軽度で一時的なものがほとんどです。
服用前にリスクを理解し、治療中は保湿ケアや検査を欠かさず行うことで、安全に継続できます。
また、体調の変化を感じた際は、早めに医師へ相談し、無理をしないことが大切です。
当院では、皮膚科専門医が一人ひとりの状態を丁寧に確認しながら、副作用を最小限に抑える治療を行っています。
「他の治療で改善しなかった」「繰り返すニキビを本気で治したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
